レイク・ディストリクト(湖水地方とその周辺)に冬の間は人がいなくなるということが遠い昔のことになってしまいました。むしろ夏の混雑のあとの国立公園は、もともとの静かな姿となり、訪れるにはすばらしい時期です。雪に覆われた山でのハイキングや、霜の降りた湖畔の散歩、そして暖炉があるパブでのランチも楽しめます。
冬を歩く
1日だけでも長い休暇でも、湖水地方やカンブリアの冬にはたくさんの楽しみがあります(1日、3日、1週間のバスフリーパスがあります。 ステージコーチ社のウェブサイトをご覧ください)。冬は、2階建てバスのデッキから朝の霧や早めの日没を眺めながらあなたの内面にある創造的な部分を見つける時間になるでしょう。文学はお好きですか?もしそうであれば、555系、または599系統のバスに乗って古く趣のあるグラスミア(Grasmere)の村まで行き、グラスミア湖やライダル湖を望む息をのむような景色を眺めながら、ライダルへ向かうコフィン・トレイル(棺が通った跡の意)を歩きます。古くはアンブルサイド(Ambleside)からグラスミアの教区教会までの道に沿って運ばれた亡くなった人たちの跡をたどるだけでなく、今は亡き湖水詩人たちの巨匠ともいえるウィリアム・ワーズワース自身が過ごしたグラスミアのダブ・コテージやライダルのライダル・マウントは、散策を始めたり終えたりするにとても便利な場所です。
もう少しきつい散策にチャレンジしたい人は、ウィリアム・ワーズワースと、ナショナル・トラストの共同設立者であるキャノン・ハードウィック・ローンズリー(Canon Hardwicke Rawnsley)が別々の時期に住まいとしていたアラン・バンクから出発し、ここから人里離れた場所にあるイーズデール・ターン(Easedale Tarn)に向かうのも良いでしょう。サージャント・マン(Sergeant Man)(736m)に登り、素晴らしいハリソン・スティックル(Harrison Stickle)のすそに沿って進むと、ラングデール渓谷へ続く長く急な下り道があります。そこは、暗いその名の通りダンジョン・ギル(Dungeon Ghyll, 監獄の峡谷の意)とも呼ばれています。それから516系統のバスに乗車しアンブルサイドへ向かいます。アンブルサイドにも、グラスミアやライダル、ラングデールと同じように、たくさんの伝統的な田舎のパブがあり、冬の散歩のあとに暖まることができるすてきな暖炉があなたを待っています。車で帰ることを心配する必要はありませんよ。温かくてボリュームたっぷりの食事のあとは、おしゃれなプロセッコや地元のエールを1杯飲みましょう。
バスと船で
魅力的な町のホークスヘッドやケズウィック、コニストンへは、徒歩でも船でも行くことができます。素晴らしい散策が楽しめるウィンダミアの西湖岸へは、ウィンダミア・フェリーやステージコーチ505系統のバスを使って1年中いつでも訪れることができます。 クレイフ・ビューイング・ステーション(Claife Viewing Station)からは、ウィンダミアのパノラマビューを楽しめますし、ヒル・トップ・ファーム(冬の間は家は閉鎖されます)は、ビアトリクス・ポターのレイクランドでの最初の家で、あの楽しい「小さな絵本(ピーター・ラビット)」のほとんどを描いた場所です。さらに、古い教会やギャラリー、ギフトショップ、ティーショップがあるホークスヘッドもすばらしいです。ビアトリクス・ポターの原画のスケッチは、ポターの夫が弁護士事務所として使っていた建物のビアトリクス・ポター・ギャラリーにあります(ギャラリーは12月下旬から2月中旬まで閉館します)。そして、ウィリアム・ワーズワースが1779年から1787年にかけて少年時代に8年間通った学校、ホークスヘッド・グラマー・スクールの机の上には彼の名前が彫り込まれています。
レイクランドをもっと知りたければ、ケズィック(ステージコーチ・バス555系統)から森の中を抜けフリアーズ・クラッグ(Friar’s Crag)へ行くの冬の散策道がおすすめです。ジョン・ラスキンがレイクランドのすばらしい景色の1つと言ったダーウェント・ウォーター湖(Derwentwater)の美しい景色を眺めたあと、ダーウェント・ウォーター湖にあるたくさんの船乗り場の1つ、ケズィック桟橋から自由に乗りおりができる船に乗って湖岸を散歩したり、北部の山に登ったりすることができます。または、コニストン(505系統)から、詩人・芸術家・批評家・社会革命家・保護主義者でもあったジョン・ラスキンがかつて過ごしたブラントウッド邸へクルーズ船で行きます。コニストン・オールド・マン山が見下ろすコニストン村に戻り、驚きがいっぱいのラスキン博物館(Ruskin Museum)をゆっくりと見学します。ここでは、ラスキンだけでなく、コニストンの銅鉱山の歴史や、同じ年(1964年)に陸上と水上の両方で世界速度記録を樹立した唯一の人物であるダグラス・キャンベル(Douglas Campbell)について知ることができます。湖水地方は、冒険家や鉱夫だけでなく、自然愛好家や詩人、作家、夢想家たちをいつも惹きつけていました。船やバスでこの地方を楽しみ、彼らを惹きつけたものをぜひ実際に感じてみてください。