今回のビーサムからミルソープへ向かうシークレット・サウス・レイクランドの散策では、壮大なコントラストが楽しめます。田園の丘やまだら模様の森、農地、塩性湿地、そして海を訪れます。地面を踏む足にとっては、足元には石灰岩の石畳が広がり心地よく、同様に、空想にふけるにもすばらしく、9月の青い空が北のレイクランドの山々、西のカンブリアの海岸の素晴らしい景色を楽しませてくれます。
散策は、オールド・ビーサム・ポスト・オフィス・アンド・ティールームに腰を下ろすところから始まりました。サクソン人やノルマン人の時代にさかのぼる、すばらしい聖ミカエル教会の真向かいにあります。ティールームは家族経営で、息子が2階のカフェを手伝い、お父さんは階下の店を切り盛りします。営業時間は短く、現在は午前10時から午後2時までですが、タイミングを計って営業中に訪れることは充分に価値があります。おいしい自家製のパンや軽めのランチ、おいしい紅茶とコーヒーは申し分なく文字通り愛のこもったハートの型をしたビスケットと一緒にでてきます。
町を離れ、ビーサムの有名なフェアリー・ステップスに向かいます。道はヘイル(Hale)に続き、ビーサム・ホール・ファームの要塞の塔、ピールタワー(pele tower)に見守られる野原や森をぬけていきます。ビーサム・ホール・ファームは、まだ数多く残るすばらしい中世の建物の遺跡の1つで、要塞の塔や礼拝堂、ホール、13世紀から残る建物があり、後に建てられた建物や納屋と複合しています。ここの土地、現在のカンブリア全体は、かつて激しく争われ、現在農場があるマナーハウスの敷地と建物は、北からのスコットランド人の侵入を防ぐために住居と防衛を固めたピールタワーと一体化していました。最近注意が必要なのは牛たちです。いたるところにいて、畑をくねくねと進みながらヘイルの村に向かう間、牛たちが道行く人たちを見ています。ヘイル・フェル(Hale Fell)はその先にあり、石と石の隙間と、水の作用で削られた細長いくぼみとが十字に交差する、見事な石灰岩の石畳が待ち受けています。木々の向こうには、アーンサイド・ノットの景色を垣間見ることができます。
スラック・ヘッドと牧草地を見下ろすレイトンベックの森の小道を通り、ヘイゼルスラック(Hazelslack)へ向かいます。ヘイゼルスラックの2つめの要塞の塔、おそらく14世紀後半のピールタワー遺跡には、農地の出入り口にぶたの番人(石像)がいます。スコットランド人はいなくなったので、見守るのはダムソン(の実)だけなのかもしれません。針葉樹をかぶったフェアリー・ステップス(妖精の階段)の森はこの場所からよく見え、石灰岩と苔の魔法のような森を通って歩いていくとすぐです。
フェアリー・ステップスは、自然にできた2つの石段の2番目にある階段で、2つの切り立った岩面の間に挟まれています。狭い溝の石灰岩の側面に触れずに石段を登ったり降りたりすると、妖精が願いを叶えてくれると言われています。そこまでたどり着くには、息を止めて、前を見続けながら側面に触れずに頂上にたどり着かなくてはなりません。(わたしはできませんでした。小さいので。)居心地のいい頂上には、松ぼっくりが置いてありました。大人も子ども、階段をあがったところにいる妖精が願いを叶えてくれる代わりに松ぼっくりを置いているのでしょう。石灰岩の石畳のある頂上は、ピクニックを楽しめる場所で、アーンサイド・ノットとケント河口の素晴らしい景色を眺めることができます。
ここからは、ヘイバーブラック(Haverbrack)へつながる森が続き、穏やかなピクニックができる場所からは、北に石灰岩でできた丘、ホワイト・スカーとウィットバロウの息をのむような景色があります。目を下に移すと、きらめく銀色とオークル色に風化したケント河口の砂景色が見えます。そして、ブラック・クームの山が西に向かって海に落ち込むところからレイクランド・フェルズが始まり、北へコニストン・フェルズ、ラングデールズ、レッド・スクリーズ、カークストーン・パスがのびて行きます。北西には、イル・ベル、ハイ・ストリート、ケントメア・パイクがあります。ここからは、潮の満ちたケント河口まで急な下り道が続きます。苔で覆われたドライストーンの石壁が秋のベリーでいっぱいの生け垣を支えています。道は、古い線路を少しの間たどり、冬に鳥が集まる砂地に続いています。ソルトマッシュ・ラム(塩性湿地の子羊)の群れを見つけることができるのもこの場所です。ソルトマッシュ・ラムは、カンブリアの味を求め訪れる人たちにとって地元のめずらしいものです。何百年もの間、地元の漁師がモアカム湾域で捕まえているエビもまた、繊細な味と独特の食感で有名です。
さらに、リバー・ベラ川に添って18世紀の鹿公園ダラム・タワーへ。そこは大邸宅があり以前は14世紀のピールタワーと住居があったのでその名前がつきました。川は、現在の住居に隣接する緑地をゆっくりと蛇行し、ダマジカに牧草地を与えるというような貴族の典型的な英国の風景を作り出しています。公園を通り抜け石の橋を越えて、趣のある市の立つ町ミルソープに通じています。アヒルと、お決まりですがたくさんの牛を見る時間があり、その後ケンダルに戻るステージコーチ・カンブリア555バスに乗ります。